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4.理論考察(1) 錆の回路

S波による防食効果を検証するため、いくつかの考察を行ってみる。まずは、鉄の腐食と錆が繰り返し発生するメカニズムを考えてみる。

腐食は、金属とその環境との間の化学反応、あるいは電気化学反応によって金属の性能が変わるか損耗することをいう。防食は金属が腐食するのを防ぐことをいい、防錆は金属の中の特に鉄または鋼が腐食するのを防ぐことをいう。
図4 錆の回路図
(「白錆」は筆者の造語です)

水中の鉄が腐食するには、「溶存酸素があること」、「電池作用が起きること(鉄の酸化と酸素の還元が電気的に等量、同時に起きる)」が必要である。またこのほかに微生物誘起腐食現象もある。
繰り返し進行する鉄錆の反応式は以下のようになる(図4)。

  (1)

鉄原子1個がイオン化して水中に溶け出るには電子2個と一緒に出る。酸化反応である。電子が1個だけ出ても鉄はイオン化しにくいので、さびる第一歩を踏み出せないことになる。

  (2)

水中の溶存酸素と水分子、そして(1)の電子e−が反応して、酸素は水酸イオン()となる。なお、(1)と(2)式の酸化・還元反応は同時に起こる。

   (3)

溶け出た鉄イオンに還元され、水酸化第一鉄となる。

   (4)

水酸化第一鉄はすぐに酸化されて、赤色の水酸化第二鉄となる。脱水が進行するとFe2O3・H2OまたはFeOOH(水和酸化鉄)となる。

   (5)

水酸化第二鉄は赤錆(水和酸化鉄)となる。

   (6)

赤錆FeOOHは(1)式で溶け出た2個の電子と反応し、黒錆Fe3O4(四酸化三鉄)と水酸イオンとなる。水酸イオンは還元反応(3)式で鉄イオンを水酸化第一鉄にする。

   (7)

黒錆は酸素に酸化され赤錆となる。

   (8)

赤錆が下地の鉄と鉄イオンに還元され、生成される比較的硬い黒錆(マグネタイト型)がある。赤錆に覆われて酸素不足の環境下においては硬く安定的であるが、酸素と反応すれば(7)式の赤錆になる。

上記のように、錆酸化物は酸化と還元を吸っては吐く呼吸のように繰り返し成長するので、銅のような緻密構造の酸化保護被膜ができず、粗雑な錆は成長を続けることになる。数千メートルに及ぶ長い配管内の鉄が酸化するエネルギーは、かなり大きなマイナスの力である。それ以上のプラスのエネルギーを正確に与え続けなければ、腐食の進行は止められない。
自然界における現象は、ほかからエネルギーが与えられなければ固体から液体へ、気体へと分子・原子の配列が不規則性を増大・拡散し、エネルギー損失の方向へと進む。そして、ほとんどの物質と生物は、ほかからエネルギーを与えられなければ酸化反応(電子や水素を奪われたり、酸素と結合すること)の方向へ進行する。
鉄は大地に安定して存在する酸化鉄を、工業的に還元してつくる。そして、さびて酸化鉄に戻り、土に帰る。土の色は、酸化鉄と有機物の混じった色である。防食(錆)とは、酸化反応のスピードを人工的にいかに遅らせるかということである。鉄はさびるものである。錆で錆を防ぐのが、S波の最小エネルギーで行う酵素的技術である。
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5.理論考察(2) 励起とは

S波は水分子を励起させるとともに、鉄・銅、そしてシリカ・カルシウムなどを励起させる。水分子を励起させるとは「エネルギーの高い状態にすること」であり、その振動は分子の大きな集合体の分子間力を切り、小さな集合体に変えるものである。
このようなマクロでもミクロでもない中くらいの状態にあるメゾスコピックのような水分子群には、まだ解明されていない特殊な活性や性質があるといわれている。鉄・銅を励起させるというのはエネルギー準位を高めることであり、エネルギーを蓄えるともいえる。シリカ・カルシウムなどを励起すると、結晶胚種を振動させることで熱変化による析出が起こりにくくなり、すでに結晶化したスケールは結晶核が振動され、結合力が解けて分解される。

S波が静水中を伝播する現象では、氷山の塊のような水分子の集合体が小さな真珠の玉のように細かくなり、その玉も励起し、S波は抵抗が少なく氷上を滑るように長い配管の水中を伝播することができるようになる。高置水槽でS波を発生させた場合、水分子群の励起はエネルギーを生み、同じ給水管の1階水栓まで、共振波動として熱力学的に均一方向に向うと考えられる。
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6.理論考察(3) 酸素の中の鉄と銅

人間の場合、数々の酵素類が悪性の活性酸素種を解消する働きをすることで身を守っている。そして、それら酵素類の最も重要な部位に鉄・銅などの金属錯体が働いている。一般に生体金属元素は、金属酵素・金属たんぱく質と呼ばれている。
脊柱動物の赤血球のヘモグロビンには2価の鉄があり、酸素が多い状態では酸素と結合して赤い色になる。二酸化炭素が多いと酸素を放して二酸化炭素と結合し、暗赤色に変わる。そして、細胞のミトコンドリアの内膜にある電子伝達系で還元型2価鉄イオン()と酸化型3価鉄イオン()の連鎖反応により酸素をエネルギーに変換する。
軟体動物や甲殻類は、銅が濃い青色をしたヘモシアニンの中心で酸素を運搬する。

生体金属元素の中で特に鉄が重要な位置を占める理由は、進化の環境と鉄の特性にあるといわれている。原始の海には鉄が多量に溶け、空には酸素がなく、海の海藻類が光合成を行う、というような地球初期の環境で、鉄は錯体との結合で最も幅広い酸化還元電位を得ることができ、さまざまな生命活動に適したからである。
そして、鉄では得られない酸化還元電位を銅と錯体との組み合わせで得たと考えられている。鉄を励起させると、好気性微生物は必ず活性化する。これは、酵素類のエネルギーが上がって若返るということで、エネルギーが充電されれば悪性の活性酸素に対する抵抗力が強まるといえる。
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7.理論考察(4) 水田の土壌と錆

鉄を成形加工する過程で、鋼管の表面には炭素・マンガン・ケイ素・クロム・アルミニウム・リンなどの元素が濃縮している。錆となると有機化合物・微生物も当然存在する。実際の錆の成分は、鉄と合金元素類と有機化合物である。

錆は鉄分の多い水田土壌と似ている。水田土壌の酸化還元電位の値は、-0.2〜+0.3V程度である。土壌はこの値が大きいほど酸化状態にあり、小さいほど還元状態にある。酸化状態と還元状態の境界は+0.3Vである。鉄は約-0.5〜+0.3V、銅は約+0.4Vの酸化還元電位である。水田土壌の場合、表土などの酸化的状態では3価鉄になり、作土の下の還元的状態では2価鉄となる。酸素のある(多い)・なし(少ない)で、鉄は生体内と同じように可逆変化する。

しかし、鋼管の腐食は不可逆変化の一方通行である。この違いは、鉄に与えられるエネルギーによる。黒錆(Fe3O4)には、酸素4個につき2価鉄が1個と3価鉄が2個含まれている。そして、強い磁性があり、多少導電性がある。このことは1個の2価鉄の電子が自由に動き回っていると解釈できる。1個の電子が酸素に行けば、すぐに赤錆になるということである。2価鉄は3価鉄よりエネルギー準位が高く、2価鉄が疲れて電子1個をポロッと手放したら赤い3価鉄になってしまったということである。しかし、鉄を励起し、プラスのエネルギーを供給し続けたならばどうであろう。2価鉄にもなれると考えられる。

  

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